1学期末、所見で深夜を迎えていませんか?

学期末になると、テストの採点、成績処理、保護者面談の準備と、やるべきことが一気に重なります。そのなかで、通知表の所見は「後回しにできない、でも時間がかかる」という厄介な作業です。

35人のクラスで1人あたり5〜10分かけると、最低でも3〜6時間。部活指導や保護者対応、テスト採点が集中するこの時期に、この工数は決して軽くありません。しかも、所見には二重の悩みがつきまといます。

ひとつは「毎年似たような文章になってしまう」という問題。何十人分も書き続けていると、同じ表現が繰り返され、自分でもどの生徒の文章か区別がつかなくなってきます。もうひとつは「個性を出したいが時間がない」という矛盾です。一人ひとりの特徴を丁寧に書きたい気持ちはあっても、締め切りが迫れば丁寧さより速さを優先せざるを得ない。

AIを活用することで、この状況を変えられます。この記事では、中学校の所見作成に使える実践的なプロンプトを6パターン紹介します。

AIで所見を書く前に必ず知っておくこと

プロンプトに入る前に、2点だけ確認しておいてください。

1点目:AIはあくまで「たたき台」を作るツールです

生成した文章をそのままコピーして提出するのではなく、必ず自分の目で確認し、実態に合わせて修正することが大前提です。観点別評価への落とし込みや「この生徒のこの場面」という個別の事実確認は、AIには判断できません。AIが用意した骨格を、教員が肉付けして仕上げる、というプロセスで使ってください。

2点目:生徒の個人情報をプロンプトに直接入力しないでください

氏名・出席番号・成績の数値・家庭の状況・健康状態などは、AIツールへ入力してはいけません。文部科学省の「生成AIガイドラインVer.2.0」でも、成績情報をはじめとする個人情報の入力は避けるべきとされており、提供事業者が機械学習に利用しないことを事前に確認することが求められています。詳しくは文科省ガイドライン解説記事を参照してください。

プロンプトに渡す情報は、「活発でリーダー気質の男子生徒」「委員会活動で議長を務めた」のように、個人を特定できない属性情報・行動事実に置き換えて使いましょう。

実践プロンプト集:場面別6パターン

それぞれのパターンは「どんな生徒・状況に使うか」「プロンプト例」「使う際の注意点」の3点で構成しています。プロンプト内の【 】は、実際の状況に合わせて書き換える箇所です。

パターン1:成績と行動から所見の骨格を作る(基本)

最も汎用性の高いパターンです。学習面と生活面の2軸を入力すると、所見の骨格を生成してくれます。まずここから試してみてください。

中学【学年】の通知表所見の下書きを作ってください。

【学習面の特徴】
・【教科名】が得意で、授業での発言が多い
・【課題があること】に取り組む姿勢が見られる

【生活面の特徴】
・【委員会・係活動の内容】を務めた
・グループ活動では周囲に気を配る様子が見られる

以下の3観点のうち、【重点を置きたい観点】を中心に、100〜120字程度で書いてください。
・知識・技能
・思考・判断・表現
・主体的に学習に取り組む態度

「です・ます」調で、前向きな表現にしてください。

注意点:生成された文章が実態と合っているか、必ず照合してください。AIは「それらしい文章」を作りますが、実際にその生徒が見せた行動かどうかは、担任にしか判断できません。

パターン2:苦手科目・課題がある生徒をポジティブに書く

成績が振るわない生徒の所見で「何を書けばいいかわからない」と悩む場面は多いはずです。ネガティブな事実をそのまま書くのではなく、「今後の伸びしろ・努力の方向性」として表現し直すのがポイントです。

中学【学年】の通知表所見の下書きを作ってください。

この生徒の状況:
・【苦手な教科・分野】に課題があり、定期テストの点数は低め
・授業では【どんな様子か:例「静かに聞いているが発言は少ない」など】
・提出物は【提出状況:例「遅れることがあるが最終的には出している」など】

ネガティブな表現は使わず、「今学期に見せた努力の姿勢」と「次学期への期待」を中心に、100〜120字で書いてください。
「主体的に学習に取り組む態度」の観点を重視してください。

注意点:実際には努力の場面がなかった場合、AIは「努力している」という事実でない文章を作る可能性があります。生成結果を読んで「本当にこういう場面があったか」を必ず確認してください。

パターン3:生活面(規律・協調性)に課題がある生徒

遅刻が多い、グループ活動でトラブルがあったなど、生活面の記述に慎重さが求められる場面向けです。事実をそのまま書くのではなく、成長の余地として表現することが重要です。

中学【学年】の通知表所見の下書きを作ってください。

この生徒の状況:
・生活面では【課題の概要:例「時間管理に課題があり、遅刻が見られた」など】
・一方で学習面では【良い点:例「授業への集中力は高い」など】
・【学期を通じて変化があれば記載:例「学期後半は改善が見られた」など】

生活面の課題を責める表現は使わず、「成長の余地がある部分として丁寧に記す」「前向きな締めくくりにする」方向で、100〜120字で書いてください。

注意点:「課題がある」という事実をどう表現するかは最終的に担任の判断です。生成された文章が軽すぎたり重すぎたりする場合は、表現を調整してください。保護者が読むことを前提に確認しましょう。

パターン4:部活・行事での活躍を所見に盛り込む

学習面では目立たなくても、部活や文化祭・体育祭で際立った場面があった生徒向けです。「どんな活躍があったか」を箇条書きで渡すと、それを所見の中に自然に組み込んでくれます。

中学【学年】の通知表所見の下書きを作ってください。

課外活動での特徴:
・【部活名・活動の場面:例「バスケットボール部で副キャプテンを務めた」など】
・【行事での役割・活躍:例「体育祭でクラスのリーダーとして動いていた」など】

学習面:
・【学習面の特徴を簡潔に】

部活・行事での姿を中心に、学習面とのつながりも意識して、100〜120字で書いてください。「です・ます」調で。

注意点:「部活で頑張った」という事実は所見に盛り込みやすい材料です。ただし、内申への影響もあるため、学習面との接続が無理なくできているかを確認してください。

パターン5:学力はあるが提出物・態度に課題がある生徒

テストの点数は高いのに提出物を出さない、授業態度が消極的、というケースは「主体的に学習に取り組む態度」の観点で書きにくい場面です。課題を誠実に記述しながら、前向きな表現で締める方向で使います。

中学【学年】の通知表所見の下書きを作ってください。

この生徒の状況:
・学習面(知識・技能)は高く、テストの成績も良い
・「主体的に学習に取り組む態度」の面では【課題:例「提出物の期限を守ることが難しい場面があった」など】
・授業中の様子:【態度の特徴:例「静かに聞いているが発言はほとんどない」など】

「知識・技能は高い」という事実を正直に書きつつ、主体的な姿勢の課題を誠実に記し、前向きな期待で締める文章を100〜120字で書いてください。

注意点:評価の乖離が大きい生徒の所見は、どちらかを省略すると事実と異なる印象になります。生成された文章が両面を適切にバランスしているか確認してください。

パターン6:特別な配慮が必要な生徒

学習上の困難や個別の支援が必要な生徒の所見は、特に慎重な記述が求められます。診断名や具体的な特性は入力しない。行動の事実だけをベースにした文章を生成させます。

中学【学年】の通知表所見の下書きを作ってください。

この生徒の状況:
・個別のペースで授業に取り組んでいる
・【サポートの内容:例「補助教材を使いながら学習を進めている」など】
・【今学期に見せたポジティブな場面:例「自分なりに工夫して課題に取り組む姿が見られた」など】

診断名・医療的な表現は一切使わず、「その生徒が見せた行動の事実」と「前向きな成長の記述」のみで、100〜120字の所見を書いてください。

注意点:このパターンはとくに、生成された文章を管理職や特別支援コーディネーターと確認することをおすすめします。プロンプトに個人情報を入れないことは他のパターン以上に徹底してください。

観点別評価への落とし込み方

AIが生成した所見を3観点のどれに対応させるか判断するイメージ

現行の中学校通知表では、3観点(知識・技能/思考・判断・表現/主体的に学習に取り組む態度)への対応が求められます。AIが生成した骨格は、どの観点を軸にするかによって修正の方向が変わります。

たとえばAIが「授業に積極的に参加し、意欲的に取り組みました」という文章を生成した場合、これは「主体的に学習に取り組む態度」に強く寄った表現です。もし「思考・判断・表現」を重視したい生徒であれば、「自分の考えを根拠をもとに説明する場面が見られました」という方向に書き換える必要があります。

修正の手順として使えるプロンプトも紹介します。

以下の所見の下書きを、「思考・判断・表現」の観点を重視した表現に書き換えてください。
文字数は100〜120字のままにしてください。

【AIが生成した所見のテキスト】

骨格を直接書き直すより、「観点を変えて書き換えてほしい」と指示するほうが、文章の流れを崩さずに修正できます。

時短効果の現実:どのくらい速くなるか

正直な目安を示します。

AIなしの場合、1人あたり5〜15分(悩む時間込み)が目安です。35人クラスで単純計算すると175〜525分。3〜9時間の幅があります。

AIを使った場合は、たたき台の生成に1〜2分、確認・修正に3〜5分で、1人あたり4〜7分程度に収まります。35人分で試算すると140〜245分。この記事タイトルで「半分の時間」と書いた根拠はここにあります。

ただし正直な留保を一点。慣れるまでの最初の5〜10人は、プロンプトの調整に時間がかかります。「この表現は実態と合わないな」「観点の重みが違うな」という微調整の感覚をつかむまでの投資期間だと考えてください。慣れてからが本番です。

まとめ:AIは「最初の1文」を用意してくれるツール

所見作成の最大の負荷は、「白紙から書き始めること」にあります。何を書けばいいかわからないまま時間が過ぎていく、あの感覚です。

AIを使うと、この「最初の1文」を自分で生み出す必要がなくなります。たたき台があれば、作業は「書く」から「直す」に変わります。精神的な負荷は、書き直す作業のほうが圧倒的に軽い。

完璧な所見をAIが書いてくれるわけではありません。でも「これをベースに直せばいい」という文章があるだけで、学期末の深夜残業は確実に短くなります。

まず1人分だけ、今日試してみてください。

所見の「確認・調整工程」を外注するという考え方

AIを使って所見の骨格を作れる一方、「生徒の情報をAIに渡すのは不安」という感覚を持つ先生もいます。所見は個人情報を含む文書です。学校の方針や自分の判断として、AIへの入力をためらうのは当然のことです。

そうした場合の選択肢が、外注という方法です。ポイントは、渡す材料から固有名詞を外しておくこと。「3年・男子・委員会で議長を担当・発言が多い」のように、本文前半で説明した個人を特定できない行動メモの形にすれば、あなたもAIに生徒情報を入力せず、外注側も特定情報を受け取らずに作業できます。脱識別化された行動メモを、観点別評価に対応した所見文の形に整えて返す、という使い方です。

AIが生成した文章のハルシネーション確認(事実でない内容が混入していないか)や、3観点への整合確認を含めて対応します。強みはAI活用の技術と、人間によるチェックプロセスです。教育資格や教育経験ではなく、「AIの限界を人間がカバーする」プロセスの品質で対応しています。