「海外で話題の教育AIツールを試したいけれど、日本の授業で本当に使えるのか」

Brisk Teaching、Curipod、Diffit。SNSや英語圏の教育系メディアで名前をよく見かける3つのツールですが、日本語の情報はまだ少なく、実際に自分の教室で使えるのか判断しづらいのではないでしょうか。

この記事では、ChatGPTやClaudeといった汎用AIとは違う「教育特化型ツール」である3つを、使い方・料金体系・日本語授業での使い勝手という観点で比較します。汎用AIとの使い分けを整理したMagicSchool.ai vs ChatGPT vs Claudeの比較記事の続編として、より専門特化したツールの選び方を掘り下げます。

この記事の結論

  • Googleドキュメント中心に仕事をしている → Brisk Teaching(作業画面にAIを重ねる)
  • 授業中に生徒を巻き込む双方向スライドを作りたい → Curipod
  • 同じ題材を難易度別の読解教材にしたい → Diffit
  • どれも英語圏設計。日本語の出力は必ず人の目で確認する前提で使う

3ツールはそもそも役割が違う

比較の前に、3つが「同じ土俵の競合」ではないことを押さえておく必要があります。それぞれ想定している使い方が異なるからです。

Brisk Teachingは、単体のアプリではなくChromeやEdgeの拡張機能として動きます。Googleドキュメント・スライド・フォーム・Classroom、さらにはWebページやYouTubeを開いたまま、その画面の上にAI機能を重ねて使うのが特徴です。普段の作業環境から離れずに、生徒の作文へのフィードバック生成、文章の難易度調整、スライド作成などを行えます。

Curipodは、生徒がその場で回答する双方向型の授業スライドを作るツールです。投票・ワードクラウド・自由記述・お絵かきといった参加ウィジェットをスライドに埋め込み、授業中に生徒の反応をリアルタイムで集めます。ノルウェー発のサービスで、2026年にかけて世界的に利用が急増しました。

Diffitは、1つの題材から複数の読解レベルの教材を一括生成することに特化しています。本文・URL・PDF・トピックを渡すと、学年に合わせて語彙や文の複雑さを変えた読解パッセージを、設問と語彙リストつきで出力します。

つまりBriskは「作業効率化のレイヤー」、Curipodは「双方向授業の場づくり」、Diffitは「読解教材の難易度調整」と、担う役割がずれています。ここを理解せずに機能数だけで比べると選択を誤ります。

Brisk Teaching:普段の作業画面にAIを重ねる

Briskの使い方はシンプルです。拡張機能をインストールすると、Googleドキュメントなどの画面右下にアイコンが常駐します。生徒の作文を開いた状態でアイコンを押し、「フィードバック」を選ぶと、観点別のコメントが数秒で挿入される、という流れです。

用意されている機能は30種類以上あります。代表的なものを挙げると次の通りです。

  • 生徒の提出物への観点別フィードバック生成
  • 記事やWebページの難易度(読解レベル)の引き上げ・引き下げ
  • 任意の題材からのクイズ・問題作成
  • トピックを入力してのGoogleスライド自動生成
  • 生徒が文書をどう書き進めたかを再生する「Inspect Writing」(キー入力・貼り付け・削除の履歴を可視化し、AI利用を含む書き方を確認する機能)

料金は、個人教員が使う範囲であれば無料プランで20以上のツールを利用できます。学校・地区単位での導入は、機能無制限や高度なモデル、管理ダッシュボードを含むカスタム見積もりのプランに切り替わります。

日本語の授業で使う場合、Briskはあくまで「あなたが開いている文書」に対して働くため、日本語の教材や生徒の日本語作文にもそのまま適用できます。ただしフィードバックや難易度調整の精度は、英語コンテンツを前提に磨かれてきた機能である以上、日本語では出力の質にばらつきが出ます。生成されたコメントをそのまま生徒に返さず、教員が内容を検めてから使うことが前提になります。

Curipod:授業中の「双方向」をAIで組み立てる

Curipodの中心にあるのは、生徒が端末から回答する参加型のスライドです。使い方は大きく2通りあります。

  1. トピックと学年を入力してAIに授業スライドを一括生成させる
  2. 手持ちのスライドを読み込み、投票やワードクラウドなどのウィジェットを後から重ねる

授業中は、生徒の回答がリアルタイムで画面に集まります。自由記述には「Glow and Grow」(良い点と改善点)形式のAIフィードバックを付けられ、誰がどこでつまずいているかを把握しながら授業を進められます。86言語に対応した翻訳機能も備えています。

料金は無料プランがあり、週あたりのセッション数などに上限があります。無制限に使う場合は学校・地区向けのカスタム見積もりプランになります。FERPA・COPPA・GDPRといった海外の教育データ保護基準に準拠している点も公表されています。

日本語授業との相性という点では、投票やワードクラウドといった参加ウィジェットは言語にほとんど依存しないため、3つの中では最も導入しやすい部類です。生徒に日本語で問いを投げ、日本語で回答を集める使い方は問題なく成立します。一方、AIによるスライドの初期生成や「Glow and Grow」フィードバックの文章は英語設計の影響を受けるため、生成後に日本語として自然か、内容が単元に合っているかを教員が調整する工程は欠かせません。

Diffit:同じ題材を難易度別に作り分ける

Diffitが解くのは「同じ内容を、クラスの中の異なる読解力の生徒に届けたい」という課題です。

操作は、本文を貼り付ける・URLを入れる・PDFをアップロードする・トピックを打ち込む、のいずれかから始めます。するとDiffitは、指定した学年レベルに合わせて語彙・文の長さ・複雑さを調整した読解パッセージを生成します。同じ題材を複数のレベルで同時に作れるため、たとえば「基礎クラス向け」と「発展クラス向け」を並行して用意できます。生成物には読解設問と語彙リストが自動で付き、設問もレベルに応じて難易度が変わります。

料金は、恒久的な無料プランで読解教材・設問・語彙の生成が使えます。GoogleClassroomやドキュメントへの直接書き出し、指導要領との対応づけといった機能は有料プランの範囲です。個人向けの有料プランと、児童生徒数に応じた学校向けの年額プランが用意されています。

注意したいのは、Diffitの核である「読解レベルの調整」が英語のリーダビリティ指標を土台に設計されている点です。英語の読解教材づくりでは非常に強力ですが、日本語で同じ精度のレベル分けが出るとは限りません。日本語の題材で使う場合は、生成された難易度が本当に対象学年に合っているかを、教員自身の目で判断する必要があります。

機能・料金・日本語対応の比較

3ツールの違いを一覧にまとめます。

項目Brisk TeachingCuripodDiffit
形態ブラウザ拡張機能WebアプリWebアプリ
得意なこと作業画面上でのフィードバック・難易度調整双方向の参加型授業スライド難易度別の読解教材生成
主な使いどころGoogleドキュメント中心の校務授業中の生徒参加読解教材の作り分け
無料プランあり(20以上のツール)あり(週あたりの上限つき)あり(恒久)
有料・上位プラン学校・地区向けカスタム見積もり学校・地区向けカスタム見積もり個人有料+学校向け年額
日本語授業での要注意点日本語出力の質にばらつきスライド文面は要調整(ウィジェットは言語非依存)読解レベルが英語指標ベース

料金は米ドル建てで、改定も頻繁です。導入前に必ず各サービスの公式ページで最新のプランを確認してください。

日本の教室で使えるか――3つに共通する前提

海外設計の教育AIツールを日本の教室で確かめる教員の様子

3つに共通するのは、いずれも英語圏(Briskは米国、Curipodはノルウェー)で生まれ、英語の授業と海外のカリキュラムを前提に磨かれてきたという点です。この事実は、日本の教室で使う際の判断を左右します。

教科による向き不向きがあります。英語科であれば、英語の読解教材を難易度別に作るDiffitや、英語での双方向活動を組むCuripodは本来の設計と噛み合い、力を発揮しやすいです。一方、国語・社会・数学など日本語の内容そのものを扱う教科では、AIが生成した日本語のフィードバックや読解レベルが妥当かどうかを、より慎重に確認する必要があります。

「便利さ」と「そのまま使えること」は別物です。どのツールも生成のスピードは魅力的ですが、出力された日本語が自然か、事実に誤りがないか、対象学年に本当に合っているかは、AI任せにできません。とりわけ読解レベルの判定や生徒へのフィードバック文面は、間違ったまま渡すと学習に直接影響します。海外設計のツールほど、この最終確認の工程を省けないと考えたほうが安全です。

汎用AIのハルシネーション対策と同じ考え方が、教育特化ツールにも当てはまります。生成物のチェック手順についてはハルシネーション対策の記事も参考にしてください。

タイプ別:どれから試すか

ここまでを踏まえた選び方を整理します。

Googleドキュメントやスライドで日々の校務をこなしている先生には、Brisk Teachingが入口として向いています。新しいアプリを覚え直す必要がなく、いつもの作業画面にAIを重ねる形なので、導入のハードルが最も低いです。

授業中に生徒を巻き込む活動を増やしたい先生には、Curipodが向いています。投票やワードクラウドは言語に依存せず、日本語のクラスでもそのまま成立します。まずは1コマ分のスライドを作って試すところから始めやすいツールです。

クラス内の学力差に読解教材で対応したい先生、特に英語科の先生には、Diffitが強力です。同じ題材を複数レベルで作り分ける発想は、他の2つにはない独自の価値です。

いずれの場合も、無料プランから小さく試し、日本語出力の質を自分の目で確かめてから本格導入を判断するのが確実です。ツール導入の全体像は授業導入5分から始めるKahoot!の記事のように、まず1コマで検証する進め方が失敗しにくいです。

ツールを選ぶ前に、ゴールを確認する

ここまで3ツールを比較してきましたが、最後に立ち止まって考えたいことがあります。あなたが本当に欲しいのは「使いこなせるツール」でしょうか、それとも「授業で使える完成した教材」でしょうか。

Brisk・Curipod・Diffitはいずれも優れたツールですが、成果物を手にするまでには、ツールを覚え、英語UIに慣れ、生成された日本語を確認・修正するという工程が必要です。「比較記事を読む時間すら惜しい」「英語圏設計の出力を毎回チェックし直す余裕がない」という状況なら、ツール選定そのものを飛ばして、完成品を受け取るという選択肢があります。

教材作成を外注すれば、AIで素材を生成し、人間が誤り・著作権・対象学年との整合性を確認したうえで納品する、という形で品質を担保した教材だけが手に入ります。ツールの習熟にかける時間を、そのまま授業や生徒に向けられます。

どの道を選ぶにせよ、AIの生成物を「そのまま使わない」ことは共通の前提です。ツールを自分で操るか、チェックまで含めて任せるか。自分の時間の使い方に合うほうを選んでください。