「うちの塾ならではの教材を作りたい。でも、一から問題を考える時間がない。」

個別指導塾や小規模な学習塾を運営している方から、こうした相談をよく耳にします。市販のテキストは手軽ですが、どの塾でも同じものを使っているため差別化にはなりません。かといって、自力でオリジナル教材を作るには相当な時間と手間がかかります。

AIを活用することで、この問題の構造を変えられます。この記事では、AIで問題の素材を生成し、人間が確認・修正を加えるという流れで、効率的にオリジナル教材を作る方法を解説します。

なぜオリジナル教材が差別化になるのか

大手塾チェーンと同じ市販教材を使っている限り、「教材の質」で差をつけることはできません。保護者が塾を選ぶ際に判断できるのは、立地・価格・講師の印象・合格実績などに限られます。

一方、オリジナル教材を持つ塾は、それ自体がひとつの訴求ポイントになります。「この塾でしか手に入らない問題集」「生徒の通う学校の定期テストに対応した問題」「この地域の受験校に特化した過去問演習」といった教材は、保護者と生徒に塾固有の価値を伝えられます。

ただし、オリジナル教材を作るコストが高すぎると、塾の運営負荷が上がるだけで本末転倒になります。AIを使うのは、このコストを下げるためです。

塾のオリジナル教材にAIで作れる問題の種類

ChatGPTやClaudeといったAIツールは、教材の「素材生成」において実用的な精度を発揮します。具体的には以下のような問題形式に対応できます。

4択問題・○×問題は、単元名と難易度を指定するだけで複数問まとめて生成できます。定期テスト対策の確認問題や、授業前のウォームアップ問題として使いやすい形式です。

穴埋め問題・並び替え問題は、既存の文章や例文を素材として入力し、AIに穴埋め形式に変換させる方法が有効です。自塾で使っている教科書や資料を流し込むことで、授業の文脈に沿った問題を素早く作れます。

単元の要点まとめ・解説文は、特定の単元について「中学2年生向けにわかりやすく説明して」のように指示することで、説明文の叩き台を出力させられます。講師が口頭で説明していた内容をテキスト化する際の下書きとして活用できます。

同じ単元の類題をまとめて量産したい場合にも、AIは効果的です。「中学2年・一次関数の変化の割合を求める問題を、難易度を少しずつ変えて10問作って」のように条件を絞り込むだけで、バリエーションのある類題セットを一度に出力させられます。生徒の誤答傾向が把握できている場合は、「負の数の符号ミスをしやすい生徒向けに、符号の扱いに注意が必要な計算問題を5問作って」のように弱点を指定すると、狙いを絞った補充問題を作れます。

ただし、生成された問題の答えと計算過程の確認は必須です。数値の誤りや矛盾した選択肢が混入することがあるため、一問ずつ目を通すことを前提にした上で活用してください。

AI生成の限界と人間のチェックの役割

AIが生成した問題は、そのまま教材に使えるわけではありません。ハルシネーション(事実と異なる情報の出力)のリスクがあるため、必ず内容の確認が必要です。

特に注意が必要なのは、数値・年号・固有名詞の正確性、問題文と正解の対応関係、選択肢の中に紛らわしい誤答が含まれていないかどうかです。また、難易度の調整や、自塾の生徒の実態に合わせた表現への修正も、AIには任せられない部分です。

ここでの人間の役割は「ゼロから作る」ことではなく「確認して修正する」ことです。素材はAIが用意し、品質の担保と塾独自のアレンジを人間が加える、という分担がコスト削減と品質維持の両立につながります。

塾長が自力でやる場合の基本的な流れ

AIを使って教材を作る基本的な手順は以下の通りです。

AI教材作成の基本フロー

まず、作りたい教材の条件を整理します。対象学年・科目・単元・問題数・難易度・問題形式を決めておくと、AIへの指示が具体的になり、使える素材が出てきやすくなります。

次に、その条件をAIに入力して問題を生成します。一度の出力ですべてが揃うことは少ないため、「もう少し難しくして」「選択肢の誤答をわかりにくくして」のように追加指示を重ねながら調整するのが現実的です。

生成された問題を一問ずつ確認し、事実の誤りや不自然な表現を修正します。難易度のばらつきがある場合は問題を取捨選択し、必要に応じて手を加えます。最後にレイアウトを整えて完成です。

外部に任せる選択肢

ここまでの手順を自分で回す場合、条件整理から問題生成、事実確認、難易度の調整、レイアウトまでを含めると、1つの教材で数時間かかることも珍しくありません。とくに年号・数値・固有名詞のハルシネーション確認や、自塾の生徒に合わせた難易度の微調整は、AIに任せきりにできず人の目が必要な工程です。

時間を取られるのはこの「生成後の確認・修正」の部分です。ここを外部に任せるという選択肢があります。AI生成と人間によるチェックをセットで提供する教材作成代行サービスを使えば、条件を指示書として渡すだけで、確認・修正まで済んだ教材を受け取れます。

一度作った教材は繰り返し使える塾固有の資産になるため、初期の作成コストを時間あたりで考えると、長期的には低コストの投資になります。

依頼する際に明確にしておくとよいのは、対象学年と科目、問題数と形式、難易度の目安、使用する予定の授業場面(導入・演習・テストなど)です。条件が具体的なほど、意図に合った教材が返ってきます。

教材を「塾の資産」にする

オリジナル教材は、一度作れば繰り返し使える塾固有の資産になります。毎年の定期テスト対策、入塾説明会でのサンプル配布、塾のウェブサイトでの無料プレゼントなど、教材を活用できる場面は授業以外にも広がります。

市販テキストとの違いを保護者に説明できる教材を持つことは、単なる差別化ではなく、塾が何を大切にしているかを伝えるコミュニケーションにもなります。AIを使って作成コストを下げながら、その分の時間とエネルギーを教材の質と塾の個性に投じることが、長期的に選ばれる塾を作るための一歩になります。