教員のAI利用率は本当に55%?仙台大・MM総研・スタディポケット3調査を読み解く
「教員のAI利用率は55%」というニュースを見た数日後に、「実は32.3%」という別の調査結果を目にして戸惑ったことはないでしょうか。同じ「教員のAI利用率」のはずなのに、報じられる数字は調査ごとに大きく異なります。
この記事では、2025年に公表された3つの調査(仙台大学AI教育研究チーム・MM総研・スタディポケット)を並べ、なぜ数字がこれほど割れるのかを整理します。あわせて、利用率という数字の裏で何が置き去りになっているのかも見ていきます。
仙台大学の調査:教員32.3%、学生54.5%という調査結果
仙台大学AI教育研究チームが2025年10月に公表した全国調査によると、教員の生成AI利用率は32.3%でした。前回調査からの伸び幅は約13ポイントで、着実に増えてはいます。同じ調査での学生の利用率は54.5%と、教員より20ポイント以上高い数字になっています。
注目したいのは、利用率だけでなく意識面の変化です。生成AIによる不正行為への懸念を持つ教員の割合は、26.3%から43.9%へと大きく増えました。使う人が増えるほど、「正しく使えているか」への不安も並行して膨らんでいることがうかがえます(出典:仙台大学AI教育研究チーム「学生と教員を対象とした生成AIの教育利用状況と意識に関する全国調査」2025年10月報告)。
MM総研の調査:校務利用率は55%
一方、MM総研が2025年12月時点で実施した調査では、公立小中高教員の校務における生成AI利用率が55%という結果が出ています。仙台大学の32.3%と比べると、20ポイント以上の開きがあります(出典:MM総研)。
同じ「教員のAI利用率」という言葉で語られていても、調査の対象や「利用」の定義が違えば、出てくる数字はここまで変わります。次の見出しで、この差が生まれる背景を整理します。
スタディポケットの調査:利用は一部の教員に偏っている
スタディポケットが2025年11月に公開したデータでは、上位5%の教員が全利用量の38%を占めるという結果が示されています(出典:スタディポケット)。
つまり「利用したことがある教員」の数え方をするか、「日常的に使い込んでいる教員」に絞って見るかによって、実態の見え方は大きく変わります。一部のヘビーユーザーが利用量を押し上げている以上、平均的な利用率という数字は、現場の実感とずれやすい構造を持っています。
なぜここまで数字が割れるのか:母集団と「利用」の定義の違い

3つの調査を並べると、数字が割れる理由はおおむね2つに整理できます。
1つ目は母集団の違いです。仙台大学の調査は教員約2,500人を対象にした全国調査、MM総研の調査は公立小中高の教員を対象にしています。調査対象の学校段階や地域構成が異なれば、利用率の数字が変わるのは自然なことです。
2つ目は「利用」の定義の違いです。「一度でも使ったことがある」を利用と数えるか、「校務で日常的に使っている」を利用と数えるかで、同じ集団を調べても結果は大きく変わります。スタディポケットのデータが示すように利用量が一部の教員に偏っている以上、集計の切り口次第で数字はいくらでも動きます。
数字そのものの優劣を競っても意味はありません。大切なのは、どの調査を引用するときも、対象と定義をセットで確認する姿勢です。
利用率が伸びても、置き去りにされやすいもの
3つの調査を通じて見えてくるのは、「利用は着実に広がっている」という共通点です。ただし、仙台大学の調査で不正行為への懸念が26.3%から43.9%に増えたように、利用が広がるスピードに、安心して使うための確認体制が追いついているとは限りません。
文部科学省の生成AI利活用ガイドラインVer.2.0でも、AIの生成物を人間が確認する工程の組み込みが求められています。詳しくは文科省ガイドラインVer.2.0の解説記事で取り上げています。
まだAIを教材づくりに取り入れていない方は、まずは負担の大きい授業準備から試すのが近道です。具体的な方法はAIで授業準備を時短する10の方法でも紹介しています。利用率という数字の先にあるのは、一人ひとりの教員が「安心して使えているか」という、もっと地道な積み重ねです。
