英語の授業準備にAIを使ってみたいけれど、どこから手をつければいいかわからない。そんな英語科教員に向けて、教材タイプ別のプロンプト例と注意点をまとめました。

英語教材こそAIの得意分野、ただし落とし穴もある

英語教材とAIの相性は、他教科と比べてもとくに良好です。ChatGPTやClaudeなどの大規模言語モデルは英語で大量のテキストを学習しており、語彙リストや例文、対話文、長文の生成精度はかなり高いレベルにあります。指定した文法事項を含む対話文を数十秒で出力させたり、特定のトピックで語数と難易度を指定したオリジナル長文を即座に生成したりすることができます。

一方で、英語科には英語科ならではの落とし穴があります。

1つ目は著作権の問題です。検定教科書の本文をそのままAIに貼り付けて「リライトして」「設問を作って」と依頼すると、著作権上の問題が生じる可能性があります。

2つ目は語彙・文法レベルの整合性です。AIが生成した英文は文法的に正確でも、使用中の教科書の進度や既習語彙の範囲を超えていることがあります。

3つ目は固有名詞・数字の誤りです。地名・人名・作品名をAIが自信を持って誤って生成するケースがあります。

このガイドでは、英語科でよく使われる教材タイプごとにプロンプト例と注意点を整理します。

AIで作れる英語教材5種類

英語教材のなかでAIが対応できるのは、大きく5種類です。

教材タイプAIが得意な度合い人間チェックの重さ
語彙リスト高い軽め(レベル確認中心)
例文高い軽め(文法事項の確認)
対話文(ダイアログ)高い中程度(自然さ・文法確認)
長文読解(本文・設問)中程度重め(内容正確性・レベル確認)
英作文の添削フィードバック中程度重め(過剰修正・観点確認)

AIが得意な度合いが高くても、人間チェックをゼロにはできません。とくに長文や添削では、AIの出力をそのまま生徒に渡さず、教員が一度目を通す工程が必要です。

教材タイプ別プロンプト集

単語リスト・例文を作る

語彙リストはAIが最も安定した出力を返す領域のひとつです。コツはCEFRレベルまたは学年・学期を明示することです。「高校2年1学期」など教科書の進度で指定するよりも、「B1レベル」などCEFRで指定したほうが難易度の制御がしやすい傾向があります。

以下の条件で英単語リストと例文を作成してください。

・テーマ:【例:environment / food culture / technology】
・対象:【例:高校2年生 / CEFRのB1レベル】
・語数:【例:20語】
・各単語に例文を1文ずつ添付する
・例文は対象レベルの既習文法のみで構成する
・日本語訳も併記する

出力形式:
1. 単語(品詞)
   例文:(英文)
   意味:(日本語訳)

確認すべき点は、生成された例文に対象学年の未習文法が含まれていないかどうかです。とくに関係代名詞・分詞構文・仮定法など、進度によって差が出る文法事項に注意してください。

対話文(ダイアログ)を作る

対話文は場面設定と「使わせたい表現」を明示するのがコツです。使わせたい文法・表現をあらかじめ指定することで、授業で扱いたい文型を自然に含む対話を生成できます。

以下の条件で英語の対話文を作成してください。

・場面:【例:空港のチェックインカウンター】
・話者:2名(A と B)
・含めたい表現・文法:【例:Could you ~? / I'd like to ~】
・ターン数:【例:各6ターン(計12文)】
・語彙レベル:【例:CEFRのA2〜B1】

自然な会話の流れになるよう配慮してください。

出力後は、実際の発音や口調として自然かどうかを確認してください。また、対象レベルに合わない口語表現や略語(gonna や wanna など)が混入していないかも確認が必要です。プロンプトに「フォーマルな英語で統一する」と追加指示すると調整できます。

長文読解の本文・設問を作る

長文読解では、オリジナル英文を生成させることが著作権リスク回避の核心です。検定教科書や市販問題集の本文をそのまま貼り付けてAIに加工させると著作権上の問題が生じうるため、AIにゼロから英文を生成させる使い方が安全です(著作権の詳細はこちらの記事で解説しています)。

以下の条件で英語の長文読解問題を作成してください。

・トピック:【例:人工知能が医療に与える影響】
・語数:【例:300語程度】
・対象:【例:高校2年生・CEFRのB1レベル】
・注意:既存の著作物を参照せず、オリジナルの英文を生成すること
・設問数:【例:5問】
・設問形式:【例:内容一致(〇×)3問・空所補充2問】
・設問は日本語で作成する

本文の後に設問、最後に解答例を出力してください。

確認すべき点は、本文中の固有名詞・数字・年号の正確さです。AIは統計や研究結果の数字を誤って生成することがあります。「2023年の調査で〜%」といった記述は必ず事実確認が必要です。

英作文をAIで添削する|ChatGPTプロンプトと注意点

英作文の添削をAIに担わせる際は、指摘の観点と出力形式を明示することがポイントです。観点を絞ることで、生徒のレベルに合った過不足のないフィードバックが得られます。

以下の英作文に対して添削フィードバックを生成してください。

【添削対象の英文をここに貼り付ける】

・想定レベル:【例:高校1年生・CEFRのA2〜B1】
・添削の観点:文法・語法の誤り、語彙の適切さ、文の流れ
・各誤りについて「誤り箇所 / 修正案 / 修正理由」の形式で日本語で示す
・観点ごとの総評を最後に付ける
・生徒のレベルを超えた書き換えはしない(誤りの修正にとどめる)

このセクションで特に注意が必要なのは個人情報の扱いです。生徒の答案には氏名や個人に特定できる記述が含まれることがあるため、AIに入力する前に氏名等は伏せてください。また、AIが出力した添削フィードバックをそのまま生徒に渡すのではなく、教員が内容を確認したうえで使用することが前提です。固有名詞の表記誤りや、文脈に合わない修正提案が混入していないかを人間が確かめる工程が欠かせません。

検定教科書との整合性チェックという英語科特有の難所

検定教科書の既習範囲とAI生成英文の整合性を確認するイメージ

英語科でAIを活用するうえで、他教科とは異なる難しさがあります。それが検定教科書との整合性の問題です。

AIに「高校2年生向け」と指定しても、どの教科書のどのUnitまで学習済みかまでは制御できません。使用教科書や学期の進度によって既習の文法・語彙は大きく異なるため、AIが生成した教材をそのまま使うと未習の表現が含まれている可能性があります。

たとえば「関係代名詞を習う前の生徒向け」と指定しても、AIが生成した例文に whichthat が紛れ込むことがあります。プロンプトで縛りを入れても完全な制御は難しく、最終的には教員が目視で確認する工程が必要です。

この確認作業は、英語科教員が最も時間をかけるべき工程でもあります。AIを使うことで「ゼロから作る時間」は大幅に削減できますが、「進度に合わせて整える時間」はなかなか削れません。AIはあくまで下書きを用意するツールとして位置づけ、整合性チェックは人間が担う。その役割分担が現実的です。

こうした「人間によるチェック」の必要性は、文部科学省のガイドラインでも明確に位置づけられています。詳しくは文科省ガイドラインVer.2.0の解説記事で取り上げています。

まとめ:英語はAIの得意分野、だからこそ「整える」工程が価値になる

英語は大規模言語モデルが最も得意とする言語であり、教材生成の精度は他教科と比べても高い傾向があります。語彙リスト・対話文・長文・添削フィードバックのいずれも、適切なプロンプトを使えば実用的な下書きを数分で得られます。

一方で、英語科特有の課題もあります。検定教科書の進度への整合、著作権への配慮、そして固有名詞・数字・年号の事実確認です。AIが「作る」工程の効率を上げるぶん、教員が「整える・合わせる」工程に集中できる環境を整えることが、英語科でのAI活用の本質と言えます。

プロンプトを調整しながら下書き生成を繰り返していくと、やがて自分の授業に合ったプロンプトのパターンが蓄積されてきます。その積み上げ自体が、AI時代の教材作成ノウハウになります。

AIと人のレビューで誤りを除去するという選択肢

AI生成の英語教材には、文法的には正しく見えても固有名詞・数字・固有表現の誤りが紛れ込むことがあります。地名・人名・作品名の表記ミス、統計データの数字の誤り、実在しない研究や引用の混入などです。授業で使う前に除去しておきたいこうした誤りは、内容を読み込まないと発見しにくいため、時間的に余裕がないときに見落とされやすい箇所でもあります。

当サービスでは、AI教材のレビュー工程を二段構えで提供しています。まずAIを使って疑わしい箇所を検出し、次に人間が該当箇所の数字・固有名詞・固有表現の誤りを重点的に確認・除去します。英語の巧拙を評価するものではなく、事実・表記の誤りを潰す品質管理の工程です。

なお、検定教科書の進度に合わせた「未習文法・語彙の判断」は、使用教科書や指導方針を把握している先生ご自身にしかできない領域です。当サービスが行うのは、ご依頼時に「対象レベル・避けたい文法項目」をお伝えいただければ、その条件から外れた可能性のある箇所を機械的に洗い出してお返しするところまでです。最終的に授業で使うかの判断は先生にお任せします。

当サービスの強みは、AIを活用した検出技術と、人間が重点箇所を確認するチェックプロセスの組み合わせです。「AIが怪しい箇所を見つけ、人が確かめる」という二段構えの工程設計にあります。

AI教材の品質管理に時間をかけることが難しい場合は、ぜひご相談ください。