AIで作った教材の著作権リスク|著作権法第35条と安全な活用ガイド
「AIで作った教材に著作権のリスクはないか」
この問いを持つ教員が増えています。
文部科学省や文化庁が相次いでガイドラインを公表し、学校現場でのAI活用が本格化するにつれ、「著作権を知らずに使っていた」では済まされない状況になりつつあります。
この記事では、教員が押さえておくべき著作権の基本と、AI生成教材に特有のリスクを整理します。「難しい法律の話はわからない」という方でも理解できるよう、具体的なNG事例と安全な運用方法をあわせて解説します。
教員が知っておくべき著作権法第35条の基本
「教育目的の複製」が認められる範囲
著作権法第35条は、学校など教育機関での授業を目的とした著作物の複製・公衆送信を、一定条件のもとで認める規定です。市販の教科書や書籍の一部を授業で使うプリントに印刷できるのは、この条文が根拠です。
ただし、無条件に認められているわけではありません。主な条件は以下の3点です。
- 複製・送信の主体が教師または授業担当者であること
- 授業の過程での使用であること(授業外配布は原則対象外)
- 著作権者の利益を不当に害しないこと
なお、学習塾・予備校・家庭教師は学校教育法上の「教育機関」に該当しないため、第35条の適用対象外です。塾での教材作成にAIを活用する場合は、既存著作物を入力しない運用を基本とする必要があります。
学校外での配布や、保護者・受験生向けのWebサイトへの掲載は「授業の過程」に含まれないため、注意が必要です。
SARTRAS制度と授業目的公衆送信補償金
2020年より、オンライン授業での著作物利用を念頭に「授業目的公衆送信補償金制度」が施行されています。各学校(設置者)が一定額の補償金をSARTRAS(一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会)に支払うことで、授業内でのデジタル送信が合法化される仕組みです。
個々の教員がこの手続きを直接行う必要はありません。学校や自治体が対応しているはずですが、所属先の確認を一度行うことをおすすめします。
AI生成物に著作権はあるのか
文化庁・文科省の結論:AI生成物に著作権は原則発生しない
文化庁は2024年3月に「AIと著作権に関する考え方について」を公表し、基本的な方向性を示しました。その後、文部科学省は2024年12月に「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン Ver.2.0」を公表し、学校現場での具体的な取り扱いをより詳細に整理しています。
参考:
現時点での基本的な整理は以下の通りです。
- AIが自律的に生成したコンテンツ:著作権は原則として発生しない
- 人間がAIを創作の道具として使い、創意工夫を加えた場合:人間の著作物として保護される可能性がある
つまり、教員がプロンプトを工夫してAIに問題を作らせ、自分で選別・編集・解説を加えた教材は、教員自身の著作物となりえます。
一方、「ChatGPTに丸投げして出力をそのままプリントした」ような場合は、著作権の保護が受けられない可能性があります。
学習データと著作権の関係
AIモデルは大量のテキストや画像を学習データとして訓練されています。「AIが著作物を学習に使っているなら、出力にも著作権侵害のリスクがあるのでは?」という疑問は自然です。
文化庁の整理では、AIの学習目的での著作物利用は著作権法第30条の4(情報解析)により原則として適法とされています。ただし、学習済みモデルが特定の著作物に酷似したコンテンツを出力した場合は、著作権侵害になりうるとされています。
教材作成の実務では、AIの出力が既存の書籍・問題集に酷似していないか確認する習慣を持つことが重要です。
【2025年版】教員がやりがちな著作権NG行為5選|文科省ガイドライン準拠

NG1:市販ドリルのスキャン入力 ―― 「授業外」で使うとアウト
市販の問題集・ドリルをスキャンしてAIに読み込ませる行為は、使う場面によって扱いが分かれます。
文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン Ver.2.0」(令和6年12月)では、授業の過程であれば、生成物が既存著作物と類似していても第35条の範囲内で利用可能とされています。一方で、以下のような使い方は第35条の対象外となり、著作権侵害リスクが生じます。
- 塾・予備校での利用(第35条は学校教育法上の「教育機関」に限定)
- 保護者向け配布物・学校公式サイトへの掲載
- 教員研究会など、自校の授業以外での共有
- 商用販売・SNSでの公開
より安全な代替方法:用途が「授業の過程」を超える可能性がある場合は、著作物を入力せず「中学2年生向け、一次方程式の応用問題を5問作成して」のように条件だけを伝えるプロンプトに変えましょう。判断に迷う場合は、最初から条件入力型にしておけば用途を選びません。
NG2:他校の教員が作ったプリントの無断転用・改変
「研究会でもらった他校のプリントをもとに、うちの学校向けに修正したい」というケースも要注意です。教員が作成した教材にも著作権は発生します。
自校の授業の過程で使用する範囲であれば、第35条の適用により許諾なく利用できる場合があります。ただし、元の教材を改変して使う場合は同一性保持権(著作者人格権)の問題が生じる可能性があり、作成者への確認・一声かけが望ましい対応です。
AIを使って改変する場合も同様で、授業外での配布や学校サイトへの掲載には元の著作権者の許諾が必要です。
NG3:AI生成画像をそのまま教材に使う
AI画像生成ツールで作ったイラストを教材に使うこと自体は問題ありませんが、注意点があります。
- 一部のAI画像生成ツールの利用規約では、商業利用や再配布を禁止しているものがある
- 生成画像が既存の著作物に酷似している場合、著作権侵害リスクがある
- 保護者や外部向けの資料に使う場合は「授業の過程」に該当しない可能性がある
各ツールの利用規約を確認し、不明な場合は使用を控えるのが安全です。
NG4:出典を明記しない引用
AIに「〇〇について要約して」と指示し、出てきたテキストをそのまま教材に貼る場合、引用元が不明確になりやすいです。引用する場合は出典を明記するルールは、AI生成物でも同様に守る必要があります。
NG5:授業外の配布物や学校サイトへの掲載
前述の通り、著作権法第35条は「授業の過程」に限定されます。保護者向けニュースレターへの掲載や、学校の一般公開ページへのPDF掲載は、第35条の保護対象外です。
著作権フリーの素材を使うか、自ら創作した内容に限定することをおすすめします。
授業外でも安心して使える著作権クリアな教材が必要な場合は、代行サービスの活用が最も確実な選択肢の一つです。用途・配布範囲をあらかじめ伝えたうえで依頼することで、リスクの判断ごと任せることができます。
著作権をクリアした教材作成の安全な手順

著作権上のリスクを最小化しながらAIで教材を作るには、以下のフローが有効です。
ステップ1:著作物をAIに入力しない
既存の教科書・問題集・プリントをAIに読み込ませるのではなく、学習目標・単元・難易度・問題数など条件のみを入力します。
ステップ2:出力を「素材」として扱う
AIの出力をそのまま使わず、誤り確認・難易度調整・解説の加筆など自分の編集作業を加えることで、著作物としての価値と安全性を高めます。
ステップ3:出力内容の類似チェック
特に文章問題・長文読解など、既存の著作物に似た内容が出力されやすい分野では、使い慣れた教材との類似がないか確認してから使用しましょう。
ステップ4:使用目的の範囲を確認する
授業内で生徒に配るのか、保護者に渡すのか、学校サイトに掲載するのか、用途によって著作権法上の扱いが変わります。授業の過程に収まる使い方を基本にしましょう。
法律の複雑さを感じたら、代行という選択肢も
著作権の知識を持ちながらAIを正しく使いこなすには、それなりの学習コストがかかります。「正直、そこまで調べている時間がない」という先生も多いのが現実です。
私たちが提供する教材作成代行サービスでは、著作権への配慮を前提としたプロセスで教材を制作しています。具体的には、既存著作物をAIに入力しない・AIによる自動レビューで問題箇所を検出したうえで人が最終確認する・用途に応じた使用範囲の確認、という3つのステップを必ず踏んでいます。
著作権の判断に時間をかけず、安全な教材をすぐに手に入れたい方は、ぜひ一度ご相談ください。
実際に代行を依頼する前に、指示書の書き方を確認しておくと失敗が少なくなります。
→ ココナラで教材作成を依頼する前に!失敗しない指示書の書き方チェックリスト
よくある質問
授業で市販ドリルをAIに読み込ませても著作権侵害になりませんか?
文部科学省ガイドライン(令和6年12月)では、授業の過程での利用であれば、生成物が既存著作物と類似していても著作権法第35条の範囲内で利用可能とされています。ただし、保護者への配布・学校サイトへの掲載・教員研究会での共有など、授業の過程を超える利用には第35条が適用されないため注意が必要です。
AI生成の教材プリントを保護者に配っても問題ないですか?
保護者への配布は「授業の過程」に含まれないため、第35条の保護対象外です。AI生成物自体には著作権が原則発生しませんが、生成の過程で既存著作物を入力している場合はリスクが生じます。著作権フリーの素材のみを使用するか、著作物を入力しないプロンプト運用を徹底することをおすすめします。
学習塾での教材作成に著作権法第35条は使えますか?
使えません。第35条は学校教育法に定める教育機関(小・中・高校・大学など)に限定されており、学習塾・予備校は対象外です。塾での教材作成では、既存の問題集・ドリルをAIに入力せず、条件のみを指定するプロンプト運用が安全です。