「一次関数の類題を10問作って」とAIに頼んだら、数分でそれらしいプリントが返ってきた。ところが答え合わせをしてみると、途中式の計算が合わず、答えがあり得ない値になっている。数学の教材をAIで作ろうとして、こうした経験をした先生や塾講師は少なくありません。

AI(ChatGPTやClaude)は数学プリントの下書きを高速で作れます。ただし、そのまま印刷して配れる状態にはなりません。この記事では、中学・高校の単元別プロンプト例に加えて、AIが最も間違えやすい「計算」をどう検算するかまでを含めた全手順を解説します。

AIで数学プリントを作るときの最大の落とし穴は「計算ミス」

AIで数学教材を作る手順を紹介する記事は多くありますが、その多くが「プロンプトを入れれば問題が出てくる」ところで話が終わっています。実際の現場でつまずくのは、その先の「出てきた問題は本当に正しいのか」という部分です。

ChatGPTやClaudeのような大規模言語モデルは、文章の続きを確率的に予測する仕組みで動いています。計算そのものを厳密に行っているわけではないため、桁の多いかけ算や、途中式が必要な方程式で、もっともらしい誤答を出すことがあります。特に注意したいのは、答えだけでなく途中式や解説まで一見自然な形で誤っているケースです。生徒はその解説を信じて覚えてしまうため、教材の誤りはそのまま授業のミスに直結します。

だからこそ、AIで数学プリントを作る工程は「生成」と「検算」の2段構えで考える必要があります。前半でプロンプトによる生成方法を、後半で検算の具体的な方法を扱います。

中学数学の単元別プロンプト例

中学数学では、単元・学年・問題数・難易度を具体的に指定するほど、そのまま使える問題が返ってきます。以下は単元別のプロンプト例です。

正負の数(中1)

中学1年生向けに、正負の数の四則計算の問題を10問作ってください。
・かっこを含む計算を半分ほど入れてください
・符号のミスをしやすい問題を意識してください
・答えは別に一覧でつけてください

一次方程式(中1〜2)

中学2年生向けに、一次方程式の文章題を5問作ってください。
・速さ、割合、個数の場面をそれぞれ入れてください
・難易度は定期テストの標準レベルにしてください
・解答は途中式つきでお願いします

一次関数(中2)

中学2年生・一次関数の単元で、変化の割合を求める問題を、
難易度を少しずつ変えて8問作ってください。
・グラフを読み取る問題も2問含めてください
・答えは別に一覧でつけてください

一度の出力ですべてが揃うことは少ないため、生成後に「もう少し難しくして」「文章題を計算問題に差し替えて」のように追加指示を重ねると、自分のクラスや自塾の生徒の実態に合わせて調整できます。

高校数学の単元別プロンプト例

高校数学は扱う概念が抽象的になるぶん、AIの誤答リスクも上がります。単元名だけでなく、対象範囲(数I・数A等)と出題の狙いを添えると、返ってくる問題の精度が安定します。

二次関数(数I)

高校1年生・数学Iの二次関数で、平方完成を使って頂点を求める問題を6問作ってください。
・係数は計算しやすい整数を中心にしてください
・うち2問は係数に分数を入れてください
・解答は平方完成の過程つきでお願いします

三角比(数I)

数学Iの三角比で、正弦定理・余弦定理を使う問題を5問作ってください。
・図が必要な問題は、辺の長さと角度を文章で明示してください
・解答は使った定理がわかるように書いてください

場合の数・確率(数A)

数学Aの確率で、順列と組み合わせを区別して使う必要のある問題を5問作ってください。
・生徒が順列と組み合わせを混同しやすい設定を意図的に入れてください
・解答は式の意味を一言添えてください

高校範囲では、AIが定義や公式の適用そのものを取り違えることがあります。次の検算工程が、中学範囲以上に重要になります。

生成した問題を検算する2つの方法

AIの計算実行機能と人間の目を組み合わせて数学問題を検算する流れ

AIが出した問題と答えは、必ず検算してから配ります。効率的な方法は2つあります。

1つ目は、AIの計算実行機能を使う方法です。ChatGPTには、入力された処理をPythonのプログラムとして実際に計算させる機能(Advanced Data Analysis、旧Code Interpreter)があります。「この問題の答えを、Pythonで実際に計算して検算してください」と指示すると、言語モデルの推測ではなく、プログラムによる計算結果を返します。文章生成として出した答えと、計算実行として出した答えを突き合わせれば、食い違う問題を誤答の候補として洗い出せます。

2つ目は、人間が解いて確認する方法です。ツールに頼っても、問題文と正解の対応、選択肢の中の紛らわしい誤答、難易度のばらつきといった部分は、最終的に人の目でしか判断できません。配布前の最終確認は、生徒が解く順に一度自分で解いてみるのが確実です。

この2つを組み合わせ、機械で計算を検算し、人間で教材としての妥当性を確認するという分担にすると、確認の抜けが減ります。ハルシネーションの具体的なチェック手順は、AIが生成した教材を使う前のチェック方法の記事でも詳しく扱っています。

プリントの体裁を整える

内容の正しさを確認できたら、最後に体裁を整えます。ここもAIが苦手とする部分です。ChatGPTは文面の生成が得意な一方で、レイアウトの調整や数式の見た目の整形、日本語フォントの扱いには弱く、そのまま出力すると数式が崩れたり記号が文字化けしたりします。

現実的なのは、問題文と解答はAIに作らせ、清書はWordや専用のプリント作成ツールで行う分業です。数式が多い場合は、数式エディタを使うか、手書きに近い形で整えると、生徒にとって読みやすいプリントになります。

自力の限界と、外注という選択肢

ここまでの手順(条件整理から生成、追加指示での調整、計算の検算、教材としての最終確認、体裁の清書まで)を1枚のプリントごとに回すと、慣れていても相応の時間がかかります。特に時間を取られるのが、生成後の検算と体裁の仕上げです。プロンプトをどれだけ工夫しても、この2工程はAIに任せきりにできません。

この「生成後の確認・修正・清書」を外部に任せるという選択肢があります。AIによる生成と人間によるチェックをセットで提供する教材作成代行を使えば、単元と条件を指示書として渡すだけで、検算と体裁の仕上げまで済んだプリントを受け取れます。塾のオリジナル教材づくりにAIを取り入れる全体像は、塾講師向けの教材効率化の方法でも解説しています。

AIは数学プリントづくりの時間を大きく縮められる道具です。ただし、その出力を安全に使えるかどうかは、生成の後ろにある検算と確認の工程にかかっています。ここを丁寧に設計することが、AIを「便利だが不安な道具」から「安心して使える教材の下ごしらえ」に変える鍵になります。